M6 心すべきはワークライフバランスではなく、ライフロールバランス

 


働き方改革の名のもとに、残業や休日出勤が制限されている。組合員には厳格に適用されるので、部下がやり残した仕事を上司が肩代わりする。上司も限られた時間の中で自らの役割が果たせず、日本の職場はオロオロしている。


言うまでもなく、働き方を時間で制限しても意味はない。短時間労働を好む人もいれば、週末を使ってでもやり切りたい仕事がある人もいる。一律に残業時間を短縮すれば、従業員の健康が守られ、生産性も上がると期待するのは安直だ。もっと働きたいという人に政府(とそれに呼応する企業)の方針で仕事をさせない国は、世界中探しても日本くらいだろう。元来、働き方は国が規定するものではなく、個人の意志と選択によるべきものだ。


「ワークライフバランス」と言うが、ライフの中からワークを切り出して、その他のライフとバランスを取ろうとしても上手く行かない気がする。本来は、「ライフロールバランス」ではなかろうか。


先ず、ライフ(生活)の中での自分のロール(役割)を5、6個上げる。例えば、仕事の上では、設計者と管理職。家庭では、夫と二
児の父。地域社会では、少年野球チームのコーチ・・などといった具合だ。趣味があるなら、水彩画家、ゴルファー、料理研究家などを加えてもいい。


次に、それぞれの役割で自分がどうありたいか(理想像)を内省して、書き出す。役割毎に理想像に近づくための活動を毎週のスケジュールに割り当てて、日々の行動をガイドする。ガイドするとは、スケジュール通りに行かずとも出来る範囲でコントロールするという意味で、気楽にやることだ。他のスケジュールに合わせて、細切れの時間を上手く使うこともコツになる。


このツールは30年ほど前に「7つの習慣」(スティーブン・
R・コヴィー著)という本から学んだ。以来ずっと使い続けている。これを使うと、仕事だけでなく、妻や子供との時間も大事にでき、趣味も上達する。また、自分が価値を置く役割(ロール)が年代と共に変化することにも気づかされる。私の場合、実母が他界するまでの数年間、子供としての自分のロールを内省する機会を得て、離れて暮らす母を定期的に訪ね、見守るガイドとなった。


このツールの優れた点は、自分の意志をベースにしていることだ。日々の忙しさに惑わされず、どうなりたいか、どう生きたいかを考える機会を与えてくれる。働き方に限らず、改革には心の底から湧き上がる内発的動機が必要だ。国の規制に依らずとも、定期的に自己を内省する習慣を持つことが、働き方改革にも
QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の向上にも威力を発揮する。


関連図書:
・「7つの習慣」 スティーブン・R・コヴィー著 キング・ベアー出版