M10 デジタル社会変革(2) 国民の IT リテラシーを高める

 


デジタル社会と聞いて多くの人が不安になるのが、個人情報の漏洩だろう。エストニアのような「全ての個人情報が詰まった ID が人に知れたら大変だ」と考える人も多いかもしれない。しかし、これは杞憂だ。

意外に思われるかもしれないが、エストニアの個人 ID は機密性の高いものではない。11桁の番号は性別の判別や生年月日等の数字からなり、その構成はオープンになっている。一般的に、この種の ID は他人に知られても、生体認証などの多段階チェックにより、本人以外はデータにアクセスできない仕組みになっている。エストニアの場合は、ID カード自体に個人認証キーが埋め込まれている。

サービス提供側も、それぞれの担当でアクセス権限が細かく限定される。医師は医療情報のみ、納税などそれ以外の情報にはアクサスはできない。また、どの個人情報に誰がいつアクセスしたか、システム上で全て本人が分かるようになっている。国は全てのアクセス理由を説明する義務を負う。日本では、国や地方自治体に届けた個人情報が誰によってどのように管理されているか、本人には全く分からない。盲目的に信じるしかないが、消えた年金問題のようなことが起こり得る。「透明性が信頼の基本」というエストニアの政治スタンスは、日本人には耳が痛い。

サイバー攻撃には、独自の暗号化技術(ブロックチェーン)で防御する。国防省にサイバー司令部が置かれ、不法アクセスによる情報書き換えはリアルタイムで検出される。また同盟国と連携して、首都タリンに国際軍事組織「NATO サイバー防衛センター」も持つ。さらに有事に備えて、データベースはバックアップシステムを「電子大使館」として国外(ルクセンブルグ)にも置いている。デジタル国家のサイバーセキュリティは、国家レベルで堅牢に防備している。

日本人は世界の中でもテクノロジーに対する信頼が低い(27位)という調査結果がある( IFA  GPC  2019 )。DX(デジタルトランスフォーメーション)の社会実装も未だにどこか半信半疑だ。残念ながら、一般的な社会人の IT リテラシーも決して高いとは言えない。DX 戦略室は新設したものの、デジタル社会の本質を理解して改革に着手している会社も、まだ極めて少ない。

何ごとも、未知なものには不安が伴う。デジタル変革は我々に何をもたらし、何が課題となるのか、基本的な理解が浅いと、疑心暗鬼からくる不安が払しょくできない。マイナンバーカードの普及が進まない理由の一つもここにある。デジタル社会転換を推し進めるには、国民全体の IT テラシーを高めることが必須である。


推薦図書:「ウェブの民、未来へ向かう」 中村重郎著 東京図書出版