M5 ウェブ会議で心するコミュニケーションの基本


コロナ禍によるリモートワークで、ウェブ会議が増えている。移動がない便利さの反面、オンラインでのコミュニケーションに難しさを感じている人もいるだろう。実はその難しさの中に、職場での意思疎通の大事な要素が含まれている。


ウェブ会議では発言者一人に参加者の意識が集まる。聞く側は互いの軽い会話も制限されるので、参加者の「話すモード」と「聞くモード」の区分けがハッキリする。発言者は、言葉に慎重にならざるを得ない一方、沈黙(あるいはミュート)状態にある聞き手の反応がつかみ難く、不安になる。特に、相手をよく知らない場合はなおさらだ。人間は日常、言葉だけでなく、顔の表情や体のチョットした動きを介して意思疎通を図っている。特に目線の役割は大きい。ウェブ会議ではこれが制限され、五感も十分には機能し難い。やり難さの原因はこの辺にありそうだ。


オンラインコミュニケーションは、その制約ゆえに、意思疎通上の大事な基本を二つ再認識させてくれる。一つは、「相手を人として尊重する」大原則。オンラインではボディランゲージも五感も鈍るので、多くを言葉に頼った意思疎通になる。その分、聞き手は話し手のチョットした言葉に表れる心の置き所に敏感になる。特にビジネス上の
関係や職場で立場が上にある人は、心の底で相手を人として尊重する基本をしっかり持つことが、日常会話以上に求められるように思う。


そのためには、先ず相手の話をしっかり「聴く」ことだ。相手の状況や考えを知らずに、一方的に意見を伝えても、理解や共感は得られ難い。相互理解は、「先に相手を理解してから、自分を理解してもらう」が鉄則。しかし対面ではこれが意外に難しい。相手の話のすき間でつい意見を挟んだり、話の方向を変えたりしがちになる。オンラインでは、「話すモード」と「聞くモード」がクリアに分かれるので、その分「聴く」ことに集中しやすい。


もう一つの基本は、「短時間で意見を端的に伝える」こと。ウェブ会議では、発言する際の緊張感が高まるので、発言を躊躇したり、逆に、
話がまとまらずに必要以上に時間を使ったりしかねない。これを克服するには訓練が必要だ。ウェブ会議も、英会話教室と同様、参加するたびに次回もっと上手く伝えるにはどう話せばよいかを反すうし、練習を積む必要がある。ウェブ会議への対応力が、我々の日常の「伝える力」も根底からアップしてくれるように思う。

オンラインコミュニケーションも経験を積めば、「ウェブ五感」なるものが研ぎ澄まされてくるように思う。それに期待しつつ、コロナ禍が教えてくれるコミュニケーションのこの二つの基本を再度こころしたい。