多くの会社と接する中で、見えることがいくつかある。その一つが職場のコミュニケーションがギクシャクしていると、会社の業績は十中八九悪いことだ。特に職責が上にある人同士の意思疎通が不十分だと、この傾向が顕著になる。彼らが担当する部門間の連携がとれない。本来、部門のトップ間で決めるべきことが決まらず、山積する課題に埋もれて部下は右往左往する。
会社は、法人という一人の巨人とみなすことができる。巨人の身体の各部位は、社内のそれぞれの部門が分担している。巨人が適切に行動するには、部位どうし、すなわち、部門間の連携が欠かせない。右手が、左手がどう動くかを知らなければ、箸を持ってもご飯を食べるような基本動作も覚束なくなる。
職場のコミュニケ―ションは仕事だ。コミュニケーションは日常生活のごく普通の行為ゆえ、改めてそんな意識はないかもしれないが、紛れもなく、欠くことのできない仕事の一部である。相手への苦手意識や好き嫌いの感情でコミュニケーションの頻度や質が落ちれば、仕事に支障をきたす。残念ながら、日本の(一部の)職場ではこの認識に乏しく、極めて稚拙に感じることがある。
仕事でのコミュニケーションの目的は、単なる情報伝達ではない。相手の「理解」と「共感」を得ることだ。この2つが得られれば、相手の行動が促され、職場が動く。経営リーダーにとって、このレベルのコミュニケーション力をもつことは必須だ。
コミュニケーションスキルは、発信(プッシュ)型と受信(プル)型に分類できる。プッシュ型には、ティーチングやプレゼンテーション、エレベーターピッチ(極短時間での意思伝達)などが、プル型には、傾聴やコーチング、カウンセリングなどが含まれる。その他に、受発信ハイブリッド型のアサーション(自他共に尊重する意思疎通)やファシリテーション(合意形成の支援)等のスキルも体系化されている。
コミュニケーションスキルにはカタカナ名(米国由来)のものが多く、日本では未だ馴染みが薄いものも少なくない。加えて日本の学校教育は読み書きが主なことから、話す力と聴く力は社会人になってからも特に意識的に鍛える必要がある。
コミュニケーションスキルは、生まれ持った性格に関わらず、トレーニングによって必ず身につく。先ずは、上述の各々のスキルの要点を学び、日々の生活の中で使いながら鍛えることだ。コミュニケーションは日々行うものなので、心すれば上達も速い。
職場のコミュニケーション力が上がれば、成果は業績に端的に表れる。相手への好き嫌いの感情を超えた意思疎通力が、職場にプロの自覚に目覚めた真の職業人も育むだろう。
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