M3 コストカットで心すべき「攻め」と「守り」


コロナ禍で企業の業績が軒並み落ちている。利益確保のために大幅なコストカットを余儀なくされる会社も少なくないだろう。非常時の苦肉の策だが、コスト削減には心すべきことがある。「攻めのコスト」と「守りのコスト」を分けることだ。

コストに「攻め」と「守り」があると言ったら、ピンとくるだろうか。「攻めのコスト」とは、事業を発展させるために使うコストを指す。製品やアプリケーションの開発、販売チャネルや営業力の強化に使うコストがこれに属する。一方、「守のコスト」とは、事業を滞りなく進めるために使うコストのことを言う。総務や経理、システム部門などの間接部門費、物流コストなどがこれに含まれる。一般に「攻めのコスト」には「効果」が、「守りのコスト」には「効率」が問われる。

短期的な利益改善が目当てでも、コスト削減には事業の長期視点が欠かせない。長期視点とは、目先の(あるいは単年度の)損益だけではなく、事業が将来にわたって継続的に生み出すキャッシュフローを重視する視点だ。この点から「攻め」と「守り」のコストでは、削減のアプローチが異なる。

通常、コスト削減アクションは「守りのコスト」と相性がいい。削減目標に向かって効率を追求する改善活動とリンクしやすいからだ。ただし、削減方針は個々の会社のコスト体質によって異なる。これまでコスト改善努力が不十分だった会社は、今回が全社のコスト効率を抜本的に見直す好機となるだろう。一方、日頃から改善活動が定着している会社は、ここで更なるコスト改善に走るより、今まで踏み込めなかった取扱製品群の再編や事業システムの改変に着手し、コスト構造そのものを再構築する機会とみるべきだ。


他方、「攻めのコスト」の削減には慎重さが必要だ。安直にこれを削ると、将来にわたって継続的にキャッシュを生み出す事業の力を削ぐことになり兼ねない。「攻めのコスト」には、成果が出るまでに一定の投入量が必要なものが多い。閾値(しきいち)以下なら全く効果が出ないケースだ。製品開発や広告宣伝などはこれにあたる。もし、どうしても「攻めのコスト」を削るなら、中途半端な削減ではなく、
思い切って活動項目を絞り込み、今の中長期事業目標と計画を大幅に設定し直す覚悟が要る。


非常事態による
景気低迷はいずれ収束する。いくらサバイバルモードにあっても、コスト削減はコロナ後の展開を見据えて行うべきだ。最も避けるべきは、「全社一律カットの大号令」。「攻め」も「守り」もなくコスト削減を断行すれば、事業体力を弱めるだけなので重々注意したい。