M6 三日坊主を36回繰り返す


コロナウィルの感染拡大とともにスタートした新年だが、どんな年になるのだろう。年頭にあたり、一年の計画に思いを馳せた人もいると思う。自分なりの道筋を描くことは出来ただろうか。今こそ未来を切り開き、力強く一歩を踏み出す我々ひとり一人の力量が問われている。

将来に思いを馳せて、現在の行動を調整できる生き物は人間だけのようだ。熊やモズ(鳥)など、一部の動物は冬に備えて食料を保存するが、これは長年の環境の中で獲得した生存の習性で、将来をアレコレ考えたうえでの行動ではない。人間がもつ「将来に思いを馳せる力」と「自らの思いで自らの行動をコントロールする力」は、万物の霊長たる所以でもある。

将来に前向きな計画をもつと、今の気分も高揚し、行動にも活力があふれてくる。身近な例では、ゴルフが好きな人なら「週末はゴルフだ!」と思えば、週半ばからウキウキして、生活にもハリが出るだろう。その逆も然り。心に描く将来への思いが暗ければ、それが今の行動にも影響し、物事も上手くは運び難い。思いの重要性は先達も指摘するところだ。マザーテレサ*は言う。

思考には気をつけなさい、
  それはいつか言葉になるから。
言葉には気をつけなさい、
  それはいつか行動になるから。
行動には気をつけなさい、
  それはいつか習慣になるから。
習慣には気をつけなさい、
  それはいつか性格になるから。
性格には気をつけなさい、
  それはいつか運命になるから。”

全ては思考が出発点。人間社会はコントロールできない偶然性だけで成り立っているわけではない。人々が描く明日への思いと、それに向かって踏み出す力の集積で動いている。ひとり一人が将来に明るい思いを馳せることが、より良い社会を創る最初の一歩だ。

とは言え、元旦の誓いは、往々にして「三日坊主」で終わりがちだ。これを克服しない限り、物事は成就せず、社会も発展しない。「思いを馳せる力」と共に求められるのは、「やり切る力」だ。

「三日坊主」克服の鍵は、「三日坊主」そのものにある。「三日坊主」は、“3日しか続かない”のではなく、“少なくとも3日は続けられる”と、私は解釈している。ダイエットでも、英会話の学習でも、人は心に誓ったことを3日くらいなら続けられる。その間はやる気の余韻が保たれるからだろう。ならば鍵は、元旦の誓いを年間通じて定期的に思い返すことだ。仮に10日毎に誓いを呼び起こすと、毎回「三日坊主」で終わっても、一年の計画の約3分の1は達成できたことになる。

元旦の誓いが成就しないのは、一度の「三日坊主」であきらめて、そもそもの誓いなどどうでもよくなってしまうことにある。この世に一度心に決めただけで何事でも実行できる人はほとんどいないだろう。意志の強さも人によってそう大差はないと思われる。だとすれば、「やり切る」ためには何らかの工夫が必要だ。

「元旦の誓いは、三日坊主を36回繰り返す」数多もの挫折経験を経てたどり着いた、念願成就の私の極意(?)である。


*マザーテレサ:カトリック教会修道女、聖人。1979 年ノーベル平和賞受賞(1910 ~ 1997