2024年が暮れようとしている。日本は元日に能登半島が地震に見舞われ、翌日には羽田空港で航空機衝突事故が発生、痛ましい出来事からスタートした年だった。政界では10月の衆議院総選挙で政権与党の議席数が過半数割れする中、石破新政権が国政の舵取りを担うこととなった。
世界では、ロシア‐ウクライナ戦争の終結の道筋が見えず、イスラエル‐パレスチナの争いは混迷を深めドロ沼化。そんな中、米国でD.トランプが大統領に再選され、年明けから政治の表舞台に戻ってくる。EUを始め主要国でも右派勢力が台頭しており、今後世界は保護主義色を強め、国際関係は一層ギクシャクしそうな気配だ。石破首相の外交手腕が問われるところだ。
当然ながら、これらは我々の事業や職場にも直接的、間接的に影響が及ぶ。関税の引上げ、戦略物資の供給不足、エネルギーコストの上昇、これらに伴う物価高、さらには国際人流の制限などが懸念され、前途は多難に見える。
2024年は、このような状況下でリーダーが堅持すべきスタンスの大切さを再確認させてくれた年だった。私が心したのは、「あるべき姿を見失わない」こと、「一隅を照らす努力を怠らない」ことの2つだ。
戦争のような一刻も早く解決すべき社会課題であっても、解決の糸口が見えないまま長引くと、人間の感覚が麻痺してくる。企業における課題も同じだ。問題と分かっていても何の変化もなければ、当初抱いた違和感が薄れ、職場には無力感だけが漂う。そんな時でもリーダーは「あるべき姿を見失わない」ことだ。
「あるべき姿」とは、如何なる環境下にあっても磁北となる目的地・『理想』のことだ。職場の磁北は、「貢献」と「連携」と「成長」の三角地点の真ん中にある。
①「貢献」:製品やサービスを通して社会に役立っているという実感が持てるか?
②「連携」:メンバーが互いにサポートし合い、有機的に連携しているか?
③「成長」:日々学び、成長し、職場が活力にあふれた心地よい居場所となっているか?
どれか一つでも欠けるなら、手立てが必要だ。
現実が理想とかけ離れる中で、気分任せにしていると、不満と苛立ちだけが大きくなりがちだ。リーダーにとって大事なことは、職場をこのムードに染めないこと。すなわち、「一隅を照らす努力を怠らない」ことだ。
「一隅を照らす」とは、グループが目指す目標とその意義を明確にした上で、自分の手の届く限り、メンバーに『希望』をもたらすことだ。希望と言っても、ここでは大それたことを意味するわけではない。少しでも、ひとり一人が安心できたり、癒されたり、勇気づけられたりするような関わり合いを続けることだ。外部環境が不安定な時こそ、リーダーはメンバーの気持ちを推し量り、共感をもって話を聴き、適切なメッセージを伝えることが大事だ。
「一隅を照らす、これ則ち国の宝なり」と説いたのは、天台宗の宗祖最澄(767-822)である。人知れず、社会の片隅に生きる人に焦点をあて、手を差し延べる行為こそが、国の宝であるとの意であろう。
来たる 2025 年がより『希望』に満ちた年となるよう、この国が少しでも『理想』を取り戻せるよう、共に学んだ仲間とともに「目指すべき磁北を胸に、一隅を照らす」ことに専心したい。
(関連留考録)M6「希望のつくり方」
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