M0 「未来」が「過去」を決める!?


「過去は変えられない」そう思うかもしれない。しかし、そうではないと教えてくれる本に出合った。「14歳のための時間論*」、宇宙物理学者 佐治晴夫さんの著書だ。この本の中に、「これから」が「これまで」を決めるとある。「過去の事実は変えることはできないが、その意味づけは今後の自分によって変わり得る」との指摘だ。

これまで、過去を悔いることも多かった。「あんなことは、すべきではなかった」、「あんな言い方をしてしまい、後悔している」、「自分の力不足から、とても不本意な結果を招いてしまった」、「今思うと、どう見ても考えが足りなかった」など、修復しようもない過去が、時間とともに心の中で沈殿するのを待っている自分がいる。人生最大の反面教師は、間違いなく「過去の自分」だ。若いころは特に、これとどう向き合えば良いのかに悩まされた。

しかし、それら全てを包み込んで今の自分があると考えると、過去の事実の意味合いも変わってくる。「禍福はあざなえる縄のごとし」というが、良いことも、悪いことも、上手くできたことも、できなったことも、全て今の自分にたどり着くために必要だったと思えれば、前に進む力にもなるだろう。

そのためには、今をしっかり生きることだ。


「過去」も「未来」も現実ではない。記憶と想像の中にある。我々は「今」という現実を生きている。では「今」とは、いったい何なのか。1秒なのか、100
分の1秒なのか、1万分の1秒なのか?「今」とは、絶え間ない時の流れの中にあって、受け取った「未来」をどんどん「過去」に追いやる瞬間でしかない。「生きる」とは、そんな「今」という時間に身をゆだねることと言い換えてもいい。

佐治さんは言う、「これからの時間は、すべてあなた自身のもの」。そう考えると、広々とした大らかな未来と、そこへと続く今が拓けるように思えてくる。14歳ならずとも、いくつになってもそう思えるのは、そこに「生きる本質」が潜んでいるからに相違ない。

 

*「14歳のための時間論」 佐治晴夫著 春秋社