M5 自分の「立ち位置」を決める


 

事業運営で行う意思決定には、算数のように、唯一の正解が存在するわけではない。選択肢が複数あれば、それぞれに良い所も悪い所もある。その中から最適と思われる解を選び出す。意思決定は経営の真髄とも言えるが、正解が定まらない中で自分の「立ち位置」を決めるには、どうしたら良いのだろうか。

私自身は、次の4つを心している。

1.先ずは、事実に基づく。
自分が依って立つところが事実(Fact)であるなら、「立ち位置」の根拠としては強い。起こった事実やそれに伴うデータには、議論の余地がないからだ。逆に Fact にもとづかない主張は、飲み屋でのトークと同じで、いくら盛り上がっても、意思決定のベースにはなり得ない。

2.判断要素の優先順位を決める
A
案にもB案にもそれぞれに良い点と悪い点があり、一概にはどちらが良いとは言えない。そんなケースはよくある。こんな場合は、何に判断の優先順位を置くかを先に決める。
例えば、マイカー購入の際、数ある車種の中から、スタイルと燃費と価格を優先して、内装やステアリングにはあまり拘らないといった選び方をするのと同様だ。要は、あれもこれもと並べて、わけが分からない状態に陥らないことだ。

3.自らの「真摯さ」を問う
自分の判断に、思い込みや勘違い、さらには不適切な私心がないかを内省する。その意思決定は、本当に社会や会社のためを思ってのことか? どこかに自分自身への利害感情が入り込んでいないか? 内なる声に耳を傾ける。

4.それでも決められない時は、仮説と割り切る
それでも判断に迷うこともあるだろう。そんな時は、それがその時点での最善な「仮説」と割り切って、先に進む。「答えは、追って歴史が語る」と、肚をくくる。

そもそも、正解が定まらないテーマに対して「立ち位置」を決めること自体、無理難題とも言える。加えて、日本人にとっては社会・職場風土がこれに更に追い打ちをかける。「職責や年功の序列を意識して、上位者には反対意見を言わない(言えない)」、「他者との同意や和が尊ばれ、皆と異なる意見や振る舞いは敬遠される」、「テーマに対する『意見の相違』が、相手に対する『嫌い』という感情と混同されやすい」といった社会通念に捕らわれるからだ。

日本以外の多くの国では、自らの「立ち位置」決めることが、議論のスタートポイントだ。何の主張もなく、ただ周りの様子をうかがって迎合するだけでは、議論に参加する資格はない。各々のメンバーの「立ち位置」を尊重し、意見をぶつけ合うことで、より良い結論にたどり着く。議論とは、元来そういうものだ。

国際社会においては、「忖度(そんたく)」や「阿吽(あうん)の呼吸」は通じ難い。世界で活躍する経営リーダーには、異なる文化や意見をもつ他者を尊重しつつ、自らの「立ち位置」を明確にして、建設的に議論をリードする力を養って欲しい。