M3 会計基礎コース101:PLは蛇口から出る水流、BSはバケツに溜る水量



タイトルにある「コース101(ワン・オー・ワン)」とは、アメリカの大学で各コースの最初に受講すべき講義を指す。受講科目の選択用に配布されるディレクトリー(冊子)には、各講義の頭に整理番号がついている。101はそれぞれのコースでの一番若い番号で、「コース101」は「最も基礎的な講義」を意味している。

私見では、アメリカの大学の授業は一般的に大変学びやすくに構成されているように思う。どんなに難しい学術領域でも「コース101」から始めると、誰でもすんなり入っていける。事実、私は造船所に4年ほど勤務した(その間学究とは全く縁遠い生活だった)後、アメリカの大学院に留学したが、お陰で大きな苦労なく海洋工学の新たな専門領域を学ぶことができた。ずいぶん昔のことだが、個人的な経験では、日本の大学はやさしい事も敢えて難しく教えるようなところがあったので、当時、日米のこの違いは衝撃的だった。

前置きが長くなったが、企業会計について、そんな「コース101」とも言える基礎的な事柄で、多くの人の理解が得られていないように思われる内容について(今後 3 回に分けて)まとめてみる。今回は、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)の関係を取り上げたい。

この関係を理解するには、先ず、それぞれの財務諸表の単位に留意する必要がある。PLBSでは、記載する数値の単位が違う。確かに、見た目は両方とも「円」(またはドルやユーロなどの通貨単位)だが、正確には、PLに記載される数値の単位は「円 / 年」BSは「円」である。

すなわち、PLは、売上や経費など、事業活動によって「一定の会計期間に動いたお金の増減額」(=フロー)を示しているのに対し、BSには、期初や期末(または期中)の「特定の一時点での資本、負債、資産の各項目の価値(金額)」(=ストック)が示されている。PLには期間が、BSには日付が付記されるのはこのためである。

このことから、PLを水道の蛇口に、BSをバケツに見立てて、年次決算報告書でのPLBSは、「前年度末のBSの各項目の値(バケツに溜っていた水量)が、PLに示された1年間の事業活動での収入と支出(蛇口の水の流れ)によって、今年度末のBSの値(バケツの水量)に変わった」と捉えると理解しやすい。

極めて基礎的なことだが、このように「PLはフロー、BSはストックを表す」ことに着目すると、2つの財務諸表が立体的に見えてくる。残念ながら、日本の会社員は概して会計に疎い。会計用語が馴染みにくいことと、自分の仕事で使う機会が少ないことなどが理由に上がろうが、「コース101」的な導入説明がないことも一因しているように思う。計は事業活動の全てをお金の動きで表すもの。社内のどの部門とも関連している。将来の経営リーダーにはもちろんのこと、会社に勤める全て人にとって、基礎的な会計知識は必須のものと心得たい。


冒頭のアメリカの大学での講義では、ノーベル賞級の高名な教授が、平易な言葉で丁寧に若い学生たちを導いていた。本当に優れたリーダーは、専門分野の第一人者であるだけでなく、次世代の育成者としても優れている。勉学だけでなく、生きざまからも、彼らから学び得たことは大きかった。


(タイトル写真は、マサチューセッツ工科大学)