M6 緊急度は低くても、重要なことに今すぐ手をつける


抱えている課題は、何から手をつけるべきか? マネジメントにとっては大事なテーマだ。手持ちの課題を「緊急度が高い・低い」と「重要度が高い・低い」の組合せで4つのグループに分けてみる。すると「緊急度が高く、重要度も高い」グループに入る課題が最初に「手をつけるべき」対象として特定される。

しかし、この種の課題を一度に多く抱え込むと仕事は窮屈になる。時間に追われる中でミスが許されず、ストレスが高まる。自分で自分の時間をコントロールしている感覚が失せ、内から湧き出る興味や意欲も持ちにくい。仕事の視野も狭まりがちになる。

仕事の鉄則は、このグループに入る課題をため込まないことだ。そのためには、緊急な仕事に追われる中でも、「緊急度は低くても、重要度が高い」課題に率先して取組むことだ。緊急度が低いことを理由に重要な課題を放置していると、いずれ重要度も緊急度も高い仕事となって降りかかってくるからだ。

「緊急度は低いが、重要度が高い」テーマは、例えば会社生活であれば、新技術・新製品の開発や更なる業務・品質改善、人材育成など。個人生活であれば、健康管理や人間関係づくり、語学や新たな業務能力の習得などだろう。いずれも今取組まなくてもすぐに困るわけではないが、継続的な発展や成長にかかわるものだ。平時からこれらに着実に取組めるか否かが、社運も人生の質をも左右する。

では、忙しい中でどうやってこれらの課題に取組むのか。これまでいくつもの事例をみていると、上手くやっている人や職場は、緊急な課題への対処と並行して、これらに取り組むための独自の「体質(習慣)」を持っていることが分かる。その際のキーワードは「早めの着手」と「こまめな取組み」だ。

多くの人が「重要な課題にはしっかり時間をとって、じっくり取り組もう」と考えがちだ。しかし忙しい中、「しっかり、じっくり」はよほど意を決しないと実現しない。それよりも「短時間でも早めに手をつけて、こまめに取組む」ほうが功を奏する。

筋トレを例にとってみる。一念発起して、週に何回かスポーツジムに通おうと思っても、時間に制約があれば上手く行かないことが多い。それより、例えば、毎晩寝る前に腕立て伏せを1回やると決める。1回だけでいい。ここがミソだ。要は出来る限り「始めるハードルを下げ」て、習慣化することに気持ちを向ける(勢いで2回以上やることがあっても、毎回始める時は1回だけと思って始める)。これが習慣化したら、目標回数を上げたり、他の運動を加えたりして、徐々に内容を拡充していく。

職場における「緊急度は低いが、重要度が高い」課題の取組みも同様で、例えば、毎週金曜日の午後15分だけその課題について考えたり、取組んだりすると決める。短時間でも早めに手をつけると意識がそこに向くので、その後無意識のうちにも考えや行動が促される。それを積み重ねる中で、時間が出来た時に一気に進める。全くやらなかった場合とは大きな差が生まれるだろう。何よりも心の安定感が違う。

目先の課題に忙殺されるだけでは、新たな境地は拓けない。快活で充実した生活の鍵は、「緊急度は低くても、重要なことに今すぐ手をつけて、小さな取組みを習慣化する」ことにある。