M1 考える時は書く、理解する時は描く


アタマの回転が速い、物事の理解が深いなど、俗に「アタマがいい」と言われる人はどんな頭の使い方をしているのだろうか。足が速い、歌が上手いなどと同様、頭がいいのも天賦の才と言われる。それでも、生まれ持った頭を少しでも「アタマよく」使いたいのが人情だ。

そんな思いから私が習慣化しているのが「考える時は書く、理解する時は描く」だ。物事を理解し考えをまとめるには、単に頭の中でグルグル考えを巡らすだけでは上手く行かないことが多いからだ。

例として次の問題に取組んで頂きたい。
『ケイスケ、タカフミ、ショウタロウ、ナナの4人は同じ大学の同期生である。かれらは別々の運動部(柔道、サッカー、陸上、バスケットボール)に所属しており、それぞれの部では新入生勧誘のための異なるイベント(ボーリング、花見、カラオケ、合コン)を計画している。彼らからの言・・

ケイスケ:俺は、中学、高校、大学と、ずっとサッカー部だよ。
タカフミ:陸上部のショウタロウは、高校時代にインターハイの決勝まで行ったそうだ。
ショウタロウ:新入生の勧誘にはカラオケが一番だと思っていたのに、出来ずに残念! 柔道部はコーラス部とつるんで合コンやるって言っているから、うらやましいよな。
ナナ: うん~と・・ワタシんとこの部はお花見よ。オ・ハ・ナ・ミ!

【問い】 この会話から、誰がどの運動部に所属し、どの新入生勧誘イベントを行うのか答えなさい(制限時間3分)』(ここで実際に3分間取組んでみて頂きたい。)

この問題は、頭の中だけで情報をまとめようとしてもなかなか答えが導けない。しかし、縦に4人の名前を並べて書き、横にクラブ活動とイベントと書いた4行2列の表を「描き」、そこに情報を書き込んでいくとスンナリ答えが得られる(解答は末尾)。

理解を進める上でのこの「描く」効力は、データ解釈にも使える。時系列に並んだ膨大な数値からトレンドや変化を一目で読み取るのは難しい。が、グラフに「描く」と歴然とする。また提案や制度など、文章主体の資料にはコンセプト(概念)図を「描き」添えると理解が深まる。イメージ情報には数字や文字情報に勝る視覚訴求力があるからだ。

一方、考えを進める時は「言葉に発する」のが鉄則だ。人間が他の動物より格段に優れた思考力を持つのは言葉のお陰だ。人間は言葉で考える。特に(話すより)「書く」と思考が進む。一度書いたレポートやメールを時間を置いて見直すと、改訂すべき箇所が見つかる経験は誰にもあるだろう。自分の考えをいったん体の外に出すことで客観的に捉え、さらに考えを進める思考ループが回るからだ。


この効果を利用した「考えを書き出す思考ツール」も上手く利用したい。代表的なものには「マインドマップ」や「マンダラチャート」がある。興味がある人は末尾の参考図書を参照されたい。

「考える時は書く、理解する時は描く」は、画期的なアイディアを引き出す可能性をも秘めている。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが、自らが模索するビジネスモデルを紙ナプキンに描きなから知人に説明した話は有名だ。職場ではコビー用紙の裏紙などを常時傍らに置いて、気軽に書いたり、描いたりしながら思考を進めることをお薦めする。

職場改善も事業改革も、そして社会変革も、ひとえにリーダーの信念と「アタマの使い方」にかかっている。


(例題の答え)
 氏名     クラブ活動   イベント
ケイスケ    サッカー部   カラオケ
タカフミ    柔道部     合コン     
ショウタロウ  陸上部     ボーリング
ナナ       バスケ部          花見
補)会話の中では「柔道部+合コン」が誰なのか示されていないが、表に他の情報を書き入れると、タカフミであることが分かる。

(参考図書)
‐ ザ・マインドマップ「ビジネス編」 トニー・ブザン著 ダイヤモンド社刊:マップを描く際に色をつけ、色彩効果も利用して思考を促す。カラフルな本。
‐ 夢を叶えるマンダラチャート マツダミヒロ著 宝島社刊:大リーグで活躍する大谷翔平選手が高校時代に記したマンダラチャートも引用して、使い方を分かりやすく伝える。巻末にトライアル教材「書き込みノート」がついている。