M4 輝けミドル、甦れ職場!


「昇格はしたくないです。課長や部長になると大変なだけだから・・」 そう言う若手社員が増えていると聞く。単に「最近の若者気質」のせいにはできないだろう。管理職(ミドル)の魅力が低下しているのである。多くの職場で同様の状況にあるなら、原因は個々の社員でも管理職でもなく、ミドルの職務内容と働き方にある。

「ミドルの魅力の低下」は、部下にとってはそのまま「職場の魅力の低下」につながる。職場には将来の自分の姿を映し出す先輩たちがいる。「自分もあんな風になりたい」と思える人がいれば元気も出るが、「ああはなりたくない」という人ばかりなら気持ちは沈む。職場を元気にするには、ミドルを輝かせることだ。

では「どうすれば、ミドルは輝くのか?」 経営トップがハンズオンで(直接)関わるべき課題だ。ミドルの職務を決めるのも、部下であるミドルの活動を支援するのも経営トップの仕事だからだ。前述の若手社員の嘆きの元凶はひとえに経営トップにあるのだが、残念ながら、これを自覚して職場改革に手を染めるトップは少ない。

ここで経営トップが行うべきは、①ミドルの負担を軽減し組織運営に集中させる、②ミドルを信頼し責任と権限を委譲する、③自らがミドルの育成にかかわり事業運営力を底上げすることだ。

    今、職場はプレイングマネージャーと呼ばれる(組織ユニットの長であると同時に、一担当者としての役割も持つ)管理職で溢れている。しかし、実体は「プレイもするマネジャー」より「マネジメントしないプレイヤー」に近いケースが多い。プレイ(実ジョブ)とマネジメントの両方を仕事に抱えれば、差し迫った実ジョブを優先せざるをえないからだ。

加えて、マネジメント経験が浅いミドルは、実ジョブは上手くこなせても、組織運営には手こずりがちだ。部下の人事考課だけでも気が重くなる。かくしてミドルは過負荷状態の中で苦闘し、部下は孤立する。職場のつながりは薄れ、人材育成にも手が回らず、ミドルはいつまでもプレイに翻弄され、事態を打開できない。

即刻プレイングマネージャーを廃止し、彼らにマネジメント力をつけさせ、現場に人を補充し、ミドルが組織マネジメントに専念できる体制を構築すべきだ。

    日本のホワイトカラーワーカーの最大の問題は、各職責の責任と権限があいまいなことだ。結果として誰も責任を取らない(取れない)体制を作り上げている。稟議書に押される判子の多さにこれが現れる。組織の各階層で職責に応じた責任と権限が行使されなければ、集団体制は機能せず、まともな事業運営はできない。

ミドルが一定レベルのマネジメント力を具えたら、彼らの役割を尊重し、相応の権限を付与し、責任の所在を明確にすることだ。トップがミドルを信頼し彼らに現場の意思決定を委ねれば、職場は一気に機動力を増す。

    そうは言ってもミドルにも不安はあるし、人によって力量にも差があるだろう。そのようなミドルをガイドしサポートし、成長を促すのはトップの仕事だ。自らがロールモデルとなって次世代を導く絶好の場となる。

事業は脈々と営まれること(Going Concern)を旨とする一方、経営トップの任期には限りがある。トップがハンズオンでミドルの育成にかかわることで、後継者候補の層が厚くなると共に、自社のDNAが伝承され、経営の継続性も担保される。

「ミドルが輝けば、職場は甦る!」
日本の経営トップはこれを肝に銘じ、職場改革に邁進して欲しい。

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