M2 事業プロセスのチェックポイントは Fix-Balance-Reorganize


「事業全体の歯車がどこかかみ合っていない。今のメンバーならもっと高い成果が出せるはずだ。」 経営者やマネジャーであれば、そんな感覚を覚えることがあるだろう。そのようなときは、事業を上流から下流へと連なる一つのプロセス、すなわちシステムとして捉え、各機能の力と機能間の連携を点検してみるとよい。

チェックの視点は、「Fix(フィックス)=治す」、「Balance(バランス)=整合性を取る」、「Reorganize(リオーガナイズ)=再編する」の三つ。事業を診る基本的なフレームとして有効だ。

Fix(=治す):機能の力を修復する
まず各機能に弱点や不備がないかを確認する。製造業を例に取れば、事業プロセスは開発、設計、調達、製造、営業、アフターサービスといった機能で構成されている。最も基本的なことだが、それぞれの部門の業務基盤、すなわち仕組みや支援ツールが不備なく整っているかを確認する。職場によっては、業務遂行に必要な情報やデータが個人のPCの中に埋もれていて、社内で適切に共有されていないこともありがちだ。

さらに部門ごとに求められる業務スキルをリスト化し、各々のメンバーの保有レベルを棚卸しする。スキルの過不足を可視化することで、部門が保有するスキルインベントリーが明らかとなり、教育やローテーションにより補強すべきポイントが明確になる。こうして各部門の力量を底上げすることが、全体最適への第一歩となる。

Balance(=整合性を取る):全体の流れを整える
個々の機能を整えたあとは、事業全体のバランスを診る。開発や設計のキャパシティに比べて調達が追いつかない、あるいは工場の稼働状況や処理能力を考慮せずに営業活動だけが先行する──こうした不均衡は、全体を俯瞰していないと見落としがちだ。また、既存顧客からの更新需要の獲得を方針に掲げながら、アフターサービスを子会社任せにしているといったケースも見られる。事業は一連の流れで成立している。ゆえに、機能間の力のバランスを最適化できるか否かが結果を左右する。

Reorganize(=再編する):構造そのものを変える
Fix
Balanceに手を尽くしても課題が残るようなら、プロセスそのものを組み替える段階に入る。たとえば、特定機能の一部を外部に委託する、あるいは逆に、これまでアウトソースしていた機能を内製化するといった再編である。100%自前主義に固執せず、ベンチャー企業との資本提携や、大学・研究機関、さらには顧客との戦略的タイアップなど、外部との協働によって新しい知と力を取り込むことも選択肢となる。

Fix-Balance-Reorganizeのフレームワークは、企業経営に限らず、日々の仕事や個人の生き方にも応用できる。今の生活に不適切な習慣はないか(Fix)、注力すべき役割や活動の重点はずれていないか(Balance)、思い切って職場や生活環境を変えるべき時期ではないか(Reorganize──こうした視点で日常を見直すことが、人生の再設計につながる。

経営スキルは人間の営み全般に通ずる。Fix-Balance-Reorganizeもまた、状況を診て、治し、整え、再構築するための普遍的な実践知である。変化が常態化する時代において、この三つの視点を自在に使いこなすことこそ、真にしなやかな経営リーダーの条件と言えよう。

”Fix!  Balance!  Reorganize!” 幾度か復唱して記憶に留め、適宜使えるようにしたい。

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