M0 「経営力を積み重ねて行く」という生き方


 
人生を歩む上で、自らの拠り所となる教えや行動規範はあるだろうか。壁にぶつかった時、進むべき方向を示してくれるもの。あるいは逆に、何かを成し遂げたり、物事が上手く進んだりした時に、自分の歩みを肯定し、背中を押してくれるもの。こうした存在があれば、人は迷いながらも前に進みやすくなる。私は、その拠り所を「経営力を積み上げて行く」という行為に置いている。

振り返れば、仕事で壁にぶつかった時も、人間関係に悩んだ時も、最後に自分を支えたのは、経営を通して学んだ物事の捉え方と行動原則だった。人生では、学校で正解を教えてくれるような場面ばかりではない。何を選ぶべきか分からず、迷いながら判断しなければならない時が幾度も訪れる。そうした時、最後に頼りになるのは、自分自身の思考力であり、人との関係を築く力であり、現実を直視して行動する力である。私は、それらを最も体系的に学べるのが「経営」だと思っている。

経営の本質は、「人を介して社会に役立つ成果を出す営み」である。したがって経営力も多岐にわたる。しかも、経営の実践にはそれらを統合した総合力、すなわちホリスティックな力が求められる。そして、それが人格形成をも促す。


経営に必要なスキルとマインドを整理すると、概ね次の6領域に集約される。

思考法―物事を分析し、本質を見抜き、複雑な問題を整理して意思決定へ結びつける力。

計画立案・問題解決―課題に対処し、自分なりの答えを導きながら、実現性と持続性を備えた計画や戦略を構想する力。

会計・財務―収益構造やキャッシュフローを理解し、限られた資源を適切に配分するための力。

組織・人事―人と協働しながら、自らも壊れずに生きていくための仕組みづくりと心の置きどころ。

意思疎通―人の声を聴き、自分の考えを他者に伝え、相互理解を築くための技術と姿勢。

倫理・習慣―社会との調和を保ちながら行動するための倫理観と、学び続けるための生活習慣。

こうして並べてみると、経営力とは単なる会社経営の技術ではなく、人として社会を生き抜くための力そのものであることが分かる。(上記分類は、弘下村塾のワークショップ・モジュール、本留考録モジュールとも対応している。)


もっとも、これらは単に知識として理解しているだけでは意味がない。大事なことは、日常の振る舞いの中にまで落とし込み、自然に実践できる状態にまで高めることだ。そのためには、日々の行動の中で意識して使い、上手くいかなかった時には基本に立ち返って振り返る。この「基本と実践の往復」を繰り返すことが欠かせない。その積み重ねが、やがて総合力としての経営力を形づくっていく。

経営力とは、会社を動かすためだけの力ではない。人生をより良く生き抜くための力であり、「経営力を積み上げて行く」という生き方こそが、人としての成長を支え、人生を豊かにしてくれる。私はそう考えている。

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