M4 組織は仕組みとセットで動かす

 

組織が大きくなるほど、仕事はなぜかうまく回らなくなる。部門間で情報は滞り、連携は崩れ、利害は衝突する。分業によって効率を高めるはずの組織が、むしろ非効率と停滞を生み出す。これは例外ではなく、組織が拡大すれば必ず現れる構造的な現象である。

組織とは、人と仕事を分業によって配置する仕組みである。分業は生産性を高めるが、同時に分断を生む。部門はそれぞれの役割と目標に最適化され、やがて全体ではなく部分に忠実に動くようになる。その結果、情報は遮断され、意思は分断され、全体としての整合性は失われる。


つまり、組織とは「効率を高める装置」であると同時に、「分断を生み出す装置」でもある。この二面性を理解せずに組織を拡大すれば、組織は必ず機能不全に陥る。

かつて、主力製品のコストダウンに設計部主体で取り組んだことがあった。製品ラインアップを絞り、部品をモジュール化して標準化する方針を打ち出した。しかし営業はこれに強く反発した。「それでは売れない」という声が上がり、顧客対応の現実との乖離が指摘された。双方共に理があるがゆえに議論は平行線をたどり、合意には至らなかった。振り返れば、問題は対立そのものではなかった。部門を越えて意思を束ねる仕組みが存在しなかったことにあった。

この種の分断を放置すれば、組織は部分最適の集合体となり、全体最適は決して実現されない。組織を機能させる責任は、構造を設計することではなく、分断を乗り越える仕組みを整えることにある。

例えば、機能別組織においては、クロスファンクショナルチーム(CFT)を設けるなど、部門を越えた意思決定の場を意図的に作る必要がある。前述のようなケースでは、設計と営業だけでなく、製造、調達、アスターサービスなどを巻き込んで、標準化のメリット/デメリットを総合的に検討し協議する必要がある。この場には経営リーダー自身が関与し、全社最適の観点で意思決定を下す必要がある。現場任せにしていては、部門最適の壁は越えられない。

また、事業部制組織では、同種機能(設計、製造、営業など)が各事業部に分散するため、専門知の共有が進みにくい。この場合には、同種機能のメンバーが横断的に集うファンクショナルコミュニティ(FC)が有効である。FCは専門性の底上げと知見の循環を促す役割を果たす。

さらに、組織の壁を突き通す会議体も重要な役割を担う。例えば、全社方針の伝達会議は組織の方向性を揃え、部門間会議は利害調整と課題共有を行う場となる。会議体は単なる報告の場ではない。組織の分断を越えて意思を接続する「意思決定の回路」として設計されるべきものである。これが機能していなければ、組織は形式だけ整っていても実際には動かない。

加えて、「部門便り」のような取り組みも軽視すべきではない。これは柔らかな情報共有の仕組みとして、組織内の心理的な分断を緩和する役割を持つ。


外資系企業の社長時代、四半期ごとに各事業部の状況を全社に伝えるメールマガジンを発行することにした。直近の主な取組みや成果に加え、メンバーの結婚や出産などの出来事も伝えるもので、極めて日本的とも言える
が、私の中では職場の求心力を高めるベースとなる大事な取組みだった。組織は論理だけでは動かない。人の理解と関係性があってはじめて動く。

もし組織に停滞や非効率が見られるのであれば、その原因は現場ではなく、経営にある可能性が高い。組織を補完する適切な仕組みが整備されているか、機能しているかをチェックしてみてほしい。


組織は単なる構造ではない。分業によって生じる分断を制御し、意思をつなぐ仕組みを備えて、はじめて機能する存在なのである。


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