M4 日本企業に眠る莫大な「埋蔵金」

 


「あなたの会社には莫大な埋蔵金が眠っている」と言ったら、にわかに信じられるだろうか。この価値はバランスシートには記載がないが、無尽蔵とも言えるものだ。しかも残念なことに、日本の多くの経営者がこの価値に気づいていない。

その「埋蔵金」の正体は、「社員の潜在能力」である。「なぁ~んだ」と思った人には、尋ねたい。
「あなたの会社では、ひとり一人の社員が、持って生まれた能力をフルに発揮していると言えるだろうか?」
経営者も、社員本人も、これに自信をもって「YES」と応えられる人は少ないだろう。人の能力開発は、生きている限り終わりのないものだ。

元来、人の能力を開花させるのは容易ではない。しかし、日本の職場はこれに逆行する要素があまりにも大きい。いくつかの要素を変えるだけで大量の「埋蔵金」が掘り出されるだろう。「日本企業の埋蔵金掘り出しガイド」を3つ示したい。

ガイド1:先ずは、経営トップがこの掘り出しに本気になる
日本には、人材育成に真剣な経営者が少ない。サラリーマン経営者にはこれが顕著だ。特に自力と運(人との巡り合せ)で今の地位を得たと考えている経営トップには、育成や教育の価値を解さない人が多い。根底に「人は育つもので、育てるものではない」という、根強い誤認がある。一方、私が勤めた多国籍企業では、欧・米系共に、どの経営トップも自らが次世代リーダーの育成に相当な時間を割いていた。GEの元CEOジェフ・イメルトは、CEOとしての時間の約3分の1を人材育成に費やしたと述懐している。次世代育成は経営リーダーが果たすべき使命であり、企業発展の礎はここにあるとの信念だ。

ガイド2:経営の意思決定は、社員の意欲と能力開発を最優先とする
人事異動や転勤、さらには企業買収後の統合プロセス(PMI)等では、特にこれが肝要だ。ともすると、これらは会社都合が優先されがちだ。かつ、日本の職場には未だに「異動と転勤には、黙って従うもの」との不文律がある。しゃにむに働けば売上が上がった時代は、社員を「労働力の塊」として見ていても良かったかもしれない。しかし、変革やイノベーションが求められるこれからは、ひとり一人の社員を「固有の意志と能力」と見なければ、自発的な新たな挑戦の芽は育たず、社会の変化にも追従できないだろう。

ガイド3:階級意識を払拭し、自由で闊達な学びの職場風土を醸成する
払拭や醸成と言っても、何も難しいことではない。先ずは、自分の方が物事が分かっている(べき)という思い込みを捨て、「部下の考えや提案にしっかり耳を傾けること。その上で相手の良い部分を認めて伝えること」だ(山本五十六なら、さらに「感謝」を伝えるだろ参照「M4 あなたの部下は育っていますか?」)。これを上司が本気でやり続ければ、3カ月で職場は変わる。他方、いくら部下に「上に向かってしっかりモノを言え!」と檄を飛ばしたところで、徒労に終わるだけだろう。問題は部下ではなく、その風土にあるからだ。

会社の力は、社員の力の総和以外の何物でもない。経営が最後まで頼るべきは、社員だ。
幸か不幸か、日本の職場は開花し切れていない逸材で溢れている。この「埋蔵金」の価値は半端ではない。
どうやってこれを掘り出すか、日本の経営リーダーの手腕と自己改革が問われている。