M1 問題解決力をアップする「パワーポイント思考法」


職場の課題解決プロジェクトに参加して、資料作成にパワーポイント(マイクロソフトオフィス、以下パワポ)を使う人も多いだろう。パワポの利用価値は単なるスライドづくりに留まらない。自在に使えるようになると、問題解決力が格段に高まる。「パワポ思考法」実践の流儀を記したい。

流儀1:パワポによるスライドづくりそのものが、思考のプロセス。
課題解決プロジェクトでのスライドづくりは、「初版が出来上がってからが本番」と心得る。スライドを改訂するプロセスが、思考を進める上で大事な時間だからだ。思考は、頭の中の考えをいったんアウトプットし、見直すことで進む。これには「パワポによるスライドづくり」がすこぶる効果的だ。スライドは、図やグラフなどのイメージコンテンツと文章の両方が使えるので、考えをアウトプットしやすい。パワポなら改訂も容易で、仕上りもきれいだ。

スライドには、必ず「コンテンツが伝えるべきメッセージを一文で書き入れる」。場所は、スライドの一番上部のタイトルの下あたりが分かりやすいと思う。「コンテンツとメッセージをしっかりシンクロ(整合)させる」ことが大事だ。スライドは情報や考えの伝達手段なので、1枚ごとに「何を伝えたいのか?」をハッキリさせることが肝となる。そのためには、「1スライド、1メッセージ」が鉄則。さもないと、スライドが複雑になり、伝えるべきメッセージも分かりにくくなる。

流儀2:「ブランクスライド」を使ってスライドを並べ替え、論理展開(ストーリー)を練る。
1枚1枚のスライドが出来上がったと思ったら、順番を考えてストーリーに落とす。ストーリーに沿って並べてみると、話の流れからスライドを改訂したり、新たなスライドが必要となったりする。

新たなスライドを作る際は、先ず、ストーリー上必要なメッセージだけを書いた空白のスライド(「ブランクスライド」と呼ぶ)を資料の該当箇所に挿入する。その上で、関連する事実やデータを収集・分析し、「ブランクスライド」の空白部にメッセージに整合したコンテンツを描くことが出来れば、OK。もし、描けない(メッセージに相応する事実やデータが確認できない)場合は、ストーリー自体を見直す。これは、「仮説思考*」と呼ばれる思考法をプレゼン資料の作成に適用したものだ。「ブランクスライド」を使いながら論理展開を練るクセがつくと、問題解決力は各段に上がる。

流儀3:結言を固めたら、スライド上のムダなコンテンツを削る。
ストーリーが完成したら、結言(プレゼン全体で主張すべきこと)を明確にして書き下す。これをもとに再度全てのスライドを見直し、結言を伝える上で関係のないコンテンツを極力削除する。場合によっては、スライドそのものを削除することもあり得る。「折角作ったのにもったいない!」と思うかもしれないが、効果的なプレゼンには、この削るプロセスは欠かせない。

「パワポ思考法」に精通すると、情報やデータを入手したとき、頭の中に自然とスライドイメージが浮かんでくるようになる。左脳が捉えた言語や数値情報を、右脳が即座にイメージに変換している感覚だ。人は左右両脳を応分に使うと、思考力が高まる(参照:M1 アインシュタイン脳の秘密 「右脳を開く」)。

プレゼンテーションは、自らが納得してこそ、人の心に響く。人の心に響けば、職場が動く。「パワーポイント思考法」は、経営リーダーの意思決定力を高め、組織をリードする強力なスキルとなる。

 

(註)*「仮説思考」
限られた情報をもとに早い段階から結論を仮定し、その後新たな事実が判明するたびに仮説を更新していく思考法。必要な情報が集まった段階で結論を得る思考法に比べて、結論に至る時間が短くてすむ。また、いつでもその時点での(仮説的)結論が言えることが利点。ただし、新たな事実に即して仮説を更新することには心理的な抵抗が働きがちで、いったん立てた仮説に縛られるリスク(認証バイアス)があるので要注意。

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