M1 思考術の基本は「幕の内弁当」と「マトリョーシカ」(2)

 


思考術のもう一つの鉄則・弐の型は、インプット情報の「抽象度(あるいは具体性)」を見極めることだ。これには「マトリョーシカ」をイメージすると分かりやすい。「マトリョーシカ」とは、サイズの異なる同形の木彫りの人形が入れ子になっているロシアの民芸品のこと。全体をまとめるには、それぞれの人形の大きさから、どの人形がどの人形を入れる(包含する)ことができるかを見極める必要がある。

論理的思考も同じで、考えをまとめるには、同類で分類した情報を抽象度(あるいは具体性)の大きさによって包含関係で整理する。複数の町の集まりで区ができ、区が集まって市となり、さらに市が包含されて県になるイメージを描いてもいい。頭の中にこの「包含構造」を持つと、インプット情報がどの大きさ(レベル)に属するものかを絶えず認識でき、論理的思考が容易になる。

「包含構造」が特に威力を発揮するのは、複数の情報が雑多にあって、一つ一つは理解出来ても、「それで一体どういうこと?」と、全体が捉えにくいような場合だ。こんな時は、まず「幕の内弁当の仕切り」(参照:思考術の基本は「幕の内弁当」と「マトリョーシカ」(1))で情報を同類に分けた後、それぞれの分類をより大きな概念(抽象度)でまとめるといい。具体例で説明したい。

ある会社の調達部門の年度計画に、以下の9項目が上がったとする。

1. 多品種・中量品の購入実績データベースを刷新する。
2. 海外主要ベンダーとの関係強化のため、年2回現地を訪問する。
3. 製造委託品の納期管理のため、外注先工程の進捗を見える化する。
4. 調達力底上げのため、部員の業務スキルを定量的に評価し見える化する。
5. 仕様オプション毎の部品価格をデータベース化し、設計部門と共有する。
6. 懸案となっている半導体の新規ベンダーを早期に開拓する。
7. 輸送手配の効率化のため、関連情報をデータベース化する。
8. 共通在庫の保有数量をリアルタイムで見える化し、3か月先までの予測を示す。
9. 国内主要ベンダーと定期的に戦略情報交換会を開く。

各々の計画はそれなりに理解できると思うが、このままだと調達部門全体の方針がイマイチ分かりにくい。ここでいったん先を読むのを止めて、この9項目を3つ前後に分類し、それぞれをより大きな(抽象度の高い)計画でまとめてみて欲しい。

この場合、(1,5,7)を「データベースの拡充・利用促進」、(2,6,9)を「ベンダーとの関係構築」、(3,4,8)を「業務の見える化推進」などのようにまとめると、無作為に並んでいた計画がより整理されたものとなる。さらにこの3つをまとめて「業務の更なる効率化とベンダー体制の維持・強化」とすると、本年度の部門方針の全体像が見えてくる。

「包含構造」は、自分の考えを整理するだけでなく、伝える相手側の理解も得やすくする。上記のように9つをバラバラに伝えるのと、「包含構造」に整理して伝えるのとでは、受け手の理解度に大きな差が出る。「思考術の弐の型は、マトリョーシカ」とは、このことを意味している。

論理的思考力は、経営判断には不可欠のものだ。特に今はインターネット上に情報があふれており、意思決定の質は、情報収集力よりも、思考力の優劣によるところが大きい。的確な情報を積み上げて、納得感の高い判断を下すには、「全集中」による思考力の鍛錬が必要だ