リモートワークで社員同士が顔を合わす頻度も、歓送迎会等の懇親の機会も減り、職場の一体感が薄れている。そう感じている人は多い。特に人事異動と重なった人は新たな職場での人間関係が築けず、窮屈な業務スタイルを余儀なくされている。メンバー同士の相互理解と「チームの一体感」が乏しいと、職場は上手く機能しない。
事業運営で「チームの一体感」が特に重要なのは、経営陣(マネジメントチーム)だ。ここが健全に、強固に結ばれていないと、全社レベルでの改革には力が入らず、目指すべき方向へ会社の舵も切れない。
しかしながら、リモートワークの普及以前から、マネジメントチームを上手くつれている企業は意外に少ない。オーナー系企業を別とすると、社長を含め役員の任期は平均4~6年。社長の任期中に役員メンバーが何名か入れ替わることもあり得る。限られた任期中に信頼で結ばれたマネジメントチームをつくるには、トップ自身の強い意識とリーダーシップが欠かせない。
コロナ禍にあって難しい面はあろうが、チームの一体感の醸成には「オフサイトミーティング」が効果的だ。「オフサイトミーティング」とは、メンバーが日常業務から離れ、職場とは異なる環境の中で重要課題を討議する会議体のことだ。
通常、マネジメントメンバーが社内で時間を共にするのは、定例の経営会議の場が主だ。実務上直接の関係がなければ、メンバー同士が接する機会は限られる。何もしなければ、メンバーの関係は、かつての上司部下関係、出身部門、表層的な相性などがベースとなり、「チームの一体感」は醸成しにくい。
全社の重要案件に質の高い意思決定を下すには、メンバー間の相互理解が欠かせない。経営会議とは別に、「オフサイト」のような時間と空間を共有する機会がどうしても必要だ。
「オフサイト」で討議するテーマは、差し迫った(緊急度の高い)課題ではなく、全社の中長期的な課題や方針など、日ごろなかなか手がつけられない「緊急度は低いが、重要な課題」とするといい。心を日常の些事から引き離し、思考の時間軸を大きく取るには、身(会議をする場所)も大きな海が見える開けた所や満天の星空が臨める所に移すといい。
またディスカッションとは別に、メンバー各人の長めの自己紹介(私はこれを「思いっきりの自己紹介」と呼び、通常一人30分ほどかける)や軽いゲームなど、メンバーが互いを知り、関係性を深めるセッションを設ける。職場とは異なる非日常的な雰囲気の中で、自己開示もしやすくなるだろう。
もちろん、単に会議の場所を社外に移し、親睦を深めて、討議すれば良いというものではない。この機会を「納得感の高い合意形成」と「信頼で結ばれたチームづくり」に結びつけるには、トップの質の高いファシリテーション力*が鍵となる。
日々職場で自分に向かって飛んでくる多くの球を打ち返しているような生活を送っていると、徐々に世の中や事業を見る視野が狭くなる。さらにこれが続くと、知らず知らずのうちに受け身の仕事スタイルが身につき、先々を考えることを怠り、他者との関係性も深まらず、広がらない。
時には会社の仲間と「オフサイト」に出て、チームを確認し、将来に思いを馳せる。先行き不透明な事業環境にあって、マネジメントには特に必要な試みに思える。
*(関連留考録)M5 日本の職場改革に必須のファシリテーション力
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