会社は法人とも呼ばれる。法人とは人間同様、意思決定を行い、社会活動に従事し、自らの行為と結果に法的な責任を負う存在である。共通の目的の下に、人が集団で社会行動に携わるための巨人のような存在だ。
巨人の身体の各部位は会社組織の各部門が担う。巨人が上手く機能するには、各部門が互いに連動し、一法人として整合の取れた行動をとる必要がある。このためには、組織のトップからボトムまで綿密な意思疎通が欠かせない。
組織内で意思疎通を有効に図る手段は、A.適切な会議体を設定する、B. 有用な報告様式(レポーティングフォーマット)を導入する、C.メンバー個々人の(対話、メール等による)コミュニケーション力を上げる、の3つが基本だ。会議もレポートもコミュニケーションもあまりにも日常的なものなので、改めて有り様(よう)を問うことは少ないと思うが、組織運営の意思疎通はこれらで成り立っている。現実はこれらを成り行き任せにしている経営リーダーが多いように思う。それぞれの要点を記す。
A. 会議体は、目的に応じて、①年度業績(予算)の達成、②効率的、効果的な組織運営、③その他の緊急課題への対応の3つのカテゴリーに分けて考える。このうち、業績フォローなど年度予算達成のための会議は、開催頻度(週次、月次、四半期毎 など)やフォロー内容によって事業運営モードが大きく変わるので、設定には特に留意が必要だ。
また、部門毎の会議に加え、特定の部門間での会議(例えば、設計・営業間会議や支店間会議など)を設定するか否かでも、職場の意志疎通の深さと広がりが変わる。
会議の運営に際しては、1回のセッションは90分以内とする、会議の冒頭で目的を明確に伝える、参加者を厳選して適正人数に絞るなどの基本ルールを設けることも欠かせない。
B. レポーティングフォーマットは、業績推移の予実管理、市場・顧客・競合情報、重要な製品開発の進捗状況など、事業運営のマイルストーンとすべきものは、経営リーダー自らが体系(項目、内容、頻度など)を定める必要がある。この設定次第で経営の事業への関わり方が変わり、事業運営の質が変わる。
フォーマットは簡潔で分かりやすいこと。エクセルシートで作った膨大な表を含むレポートも散見されるが、数値情報は必ずグラフに表し、そこから読みとれるメッセージを明確に伝えることが基本だ。
レポートは意思疎通の手段として日常的に活用することが大前提である。残業してまで書いた営業日報を、誰も見ない、フィードバックの対象にもならないなら、レポートの価値はない。
C. 健全な職場運営には、上司を核とする質の高いコミュニケーションが必須だ。「職場のコミュニケーションは仕事」という認識に立ち、メンバーのコミュニケーション力を恒常的に強化する意識づけと定期的なトレーニングが欠かせない。
組織は外圧に対しては強固にまとまろうとするが、内部の不協和には脆(もろ)い。意思疎通ベースが脆弱で職場の理解と共感レベルが低ければ、会社という巨人は意図した動きが取れずに徐々に衰退へと向かうだろう。再度基本にもどって、現行の会議体と事業の糧となるレポートのあり方を見直すと共に、社員のコミュニケーション力の強化に努めたい。
(関連留考録)M4 職場のコミュニケーションは仕事だ
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