プレイングマネージャーと呼ばれるミドル(中間管理職)がプレイ(実ジョブ)に翻弄される背景には、現場最前線での人材不足に加えて、ミドル自身にマネジメントスキルとマインドが身についていないことがある。しかし、新任のミドルなら致し方ない面もあり、経験を積みながら力量を上げていくことが肝要だ。
この際、最初に大事なことは「ミドルは部下に対して何をなすべきか」を明確に認識する(させる)ことだ。これが曖昧のまま日々を送っても、マネージャーとしての力量は思うようには身につかない。管理職教育での「基本のキ」だが、これを徹底している職場は少ないように思う。
ミドル自身は勿論のこと、トップも「ミドルが部下に対してなすべき職務」を共通認識として言語化することが大事だ。これを7つにまとめるとしたら、あなたならどのような職務(カテゴリー)を上げるだろうか。
以前の留考録で上司が成すべき役割を、グループの行く先を定める、メンバーの力を最大限に発揮する、目的地にたどり着く、の3つと記した。今回はこれをさらにブレイクダウンし、具体的な7つの職務に落としたい。
私が掲げるミドルの7つの職務とは、①経営トップの方針を伝達する、②担当部門の目標を定める、③部下の職務分担を決める、④部下の日々の活動をガイド・サポートする、⑤部下の成長をサポートする、⑥健全で活力ある職場環境を整える、そして、⑦期待される成果(業績)を達成する、である。以下にそれぞれの要点を記したい。
① 経営トップの方針伝達:トップが言うことを単にオウム返しに伝えるだけでは不合格である。自らの理解のもとに自分の言葉で伝える。もしトップの方針が曖昧だったり納得できないようなら、トップとの意思疎通を深めることだ。
② 自部門の目標設定:業績目標だけでは不十分だ。より良く、より強い部門にするためには何を目指し、どのような目標を掲げるべきか熟考する。
③ 部下の職務分担:部下の力量(業務習熟度)、本人の希望、今後の成長への期待の3視点から担当業務と仕事量を見極める。単に仕事を割り振るのではなく、各々の活動の意義を説く。
④ 日々の活動への指揮・サポート:これにはマネージャーとしての多方面の力量を必要とする。中でも「部下の職責や力量では解決できない課題」と「部下同士では調整が取れない課題(部下間の利害反駁)」には能動的に関わる。
⑤ 部下の育成:部門の業績達成のみに終始せず、部下の成長を促しサポートすることがミドルの重要な使命と心得る。日々の業務で部下の成長や改善点をメモに残す「部下ノート」の作成も有用である。
⑥ 職場環境の整備:物理的な環境整備に加え、人間関係を含め、嬉々とした(仕事をして楽しいと思える)職場づくりに注力する。
⑦ 目標達成:以上を満たしたうえで、部下の力を結集して部門に期待された成果を出す。
部下への関りだけでも、ミドルにはこれだけの職務がある。プレイングマネージャーとして片手間にできる仕事では決してない。
過去20年余り、日本の職場は固定費削減の大号令のもと、現場に人材を補充せず、マネジメント教育も不十分なままミドルに担当者の仕事を兼任させ、コスト削減を図ってきた。これが長年のボディブローとなって、今や職場は疲弊し、課題が山積し、逆に根深い収益悪化要因となっている。
さらに問題なのは、ミドルが十分なマネジメント経験を積む機会が少ないことから、将来の経営リーダー候補の層が薄くなっている。日本企業の再生は、組織運営の基本に立ち返り、職場最前線で「人を束ねて結果を出す」ミドルマネジメントの再生にかかっている。
(関連留考録)M4 つまるところ、上司が心すべき3つの役割
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