ビズリーチとリクルートエイジェントのTVコマーシャルの放映頻度に押されるように、弘倫館メンバーの転職者数も増えている。転職は今の会社での自分のアイデンティティも、これまで築いた仕事上の人間関係もオールクリアにする。それでも転職するからには、より快活な会社生活を歩んで欲しい。
転職先に一早く馴染み、自分本来の力を発揮するには、どんな事に留意すれば良いのだろうか。長年にわたり多数の転職経験者を採用し、自らも3回転職した経験をもとに「転職キャリアの留意点」を記したい。全ての転職に当てはまるとは限らないが、現在転職活動中の人、今後のキャリアで転職も選択肢と考える人にも参考になればと思う。
私が掲げる留意点は、①「対話の受発信力を高める」、②「得意分野で勝負する」、③「気づきと違和感を強みにする」、④「人への許容度を上げる」、⑤「自分の履歴書に責任をもつ」の5つ。項目ごとに説明したい。
①「対話の受発信力を高める」:新たな職場で仕事を円滑に進めるには、早期に周囲の人の信頼を得ることが肝要だ。これはひとえに仕事の力量と人柄(人格)に依るが、これらが周囲に浸透するには時間がかかる。互いに気心が知れない段階で信頼を得る鍵は、誠実で正確なコミュニケーションだ。
すなわち、相手の話に真摯に耳を傾け、相手の理解を得やすい発話を心がける。人は、話を聞かない人にも、話が分かりにくい人にも、着いては行けないものだ。自らの対話の受発信力をチェックし、さらに一段高めることが大事だ。
②「得意分野で勝負する」:それまでの職務経験から「人より上手く出来る業務」がいくつかあると思う。転職活動中にも自分の「強み」を考察する機会があろうかと思う。転職先では先ずそれを発揮できる機会を能動的に求めることだ。例え小さなことでも、周囲が認める結果を早期に出せれば、それ以降仕事の波に乗りやすい。
私の場合、コンサルタント時代に身につけた経営分析と課題特定力、日英中の語学力が転職キャリアを歩む上での支えとなった。日頃から得意分野でのプロ(職業人)としての自分の力を特定し、鍛えたい。
③「気づきと違和感を強みにする」:転職先では、良いこと・悪いこと両面で、前の職場との違いが気になるものだ。実はこれが転職者の強みとなる。特に前の職場の良い点を転職先で再現できたり、転職先で見過ごされていた潜在的課題を特定できたりすれば、転職者の大きな価値となる。
とは言え、転職直後は職場に馴染むことで精一杯だろう。転職後3カ月間は、気づいたり、違和感を抱いたりした事を全てメモに残して置くことだ。これがその後の職場改善や事業改革に役立つ。新たな職場も馴染んでしまえば、当初の違和感は薄れる。転職後3カ月が「気づきの黄金期間」と心得て、違和感を強みに転換する。
④「人への許容度を上げる」:転職先の全ての人が転職者に好意的であるわけではない。私の場合でも年上のメンバーを率いる職責で転職したケースでは、「外から来た、年下の上司」というだけで反感を持たれたり、疎まれたりすることも少なくなかったように思う。
これに引きずられて対立したり、悩んだりするのは、得策ではない。人への許容度を上げて(=相手への期待値を下げて)、相手の立場になればそのような感情も湧くのかもしれないくらいに捉え、人間関係で必要以上にイライラしないことが大事だ。一方で心強いサポーターが現れるのも世の常である。
⑤「自分の履歴書に責任をもつ」:転職は、些細なことも含め、生活と物の見方に変化をもたらす。これを混乱や後悔につなげないためには、「常に心にキャリアの大きなストーリーを描いておく」ことが大事だ。自分は最終的にどんな職業人生を望んでいて、今はどんなステージにあるのか。仮に将来ストーリーが変わっても、今それに沿って歩んでいるなら、多少の変化や困難には動じず、学びの糧として乗り越えて行けるだろう。
転職経験者をみると、転職の度にキャリアが上昇する人と、下降する人とに分かれるように思う。前者は本人に職業人としての理想や目標があり、後者は職場が変わっても目先の状況への不満が先行するからのように思える。この違いが履歴書に如実に表れる。長年一つの会社に勤めていると履歴書を更新する機会は少ないかもしれないが、転職キャリアを歩む上では「自分の履歴書には自分で責任をもつ」、この自覚が欠かせない。
ここで挙げた留意点は、実は転職する/しないに関わらず、社内の人事異動を含め、通常の会社生活でも心すべき基本と言える。環境が一変しゼロベースから再スタートする転職では、これらの基本の大切さが一層クローズアップされると言っていい。
(関連留考録)M6 転職するなら、キャリアの大きなストーリーを描く
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