M6 「引出し学習方式」からの脱却、生涯保証つき経営塾

 


15年ほど前にスタートした弘下村塾だが、現在までの受講生数は600名ほど。近年では、人事異動、昇進・昇格、海外赴任、大型プロジェクトの完遂などの報告や、職場の悩み、転職・進路相談など、卒塾同朋からさまざまな連絡を頂く。

企業内に数多ある研修プログラムの一つに過ぎないにもかかわらず、本塾が受講生の皆さんとここまでのご縁を頂けるのは、企業側の配慮とサポートに加え、ワークショップを通して構築される緊密な人間関係にある。

塾では、通常1年間、毎月2~3日のワークショップを通して、経営実践に必要なスキルとマインドセットを修得すると共に、職場の実経営課題に取り組む。この間、受講生と私とは電話とメール、オンラインミーティング等で常時つながる体制を整えている。

研修は宿泊が基本ゆえ、夜遅くまで議論したり、現状分析の作業をしたりすることもある。特に経営課題プロジェクトの最終プレゼンテーションが近づくと、メンバーも私もひときわ力が入る。一方で懇親会も盛んで、アルコールが入れば私的な話にも大いに花が咲く。塾の全てのプログラムが終了した時には、メンバーは正に「学生時代のクラブ活動の仲間」のような絆で結ばれる。

加えて、本塾は「Life-time Warranty(生涯保証)つき」を旨(むね)としている。研修が終了し企業との契約が切れた後も、受講生と私との関係は維持され、卒塾生ネットワーク「弘倫館」で結ばれている。実際は「保証」は誇大表現であり、留考録の配信を含め、私に出来る範囲での支援・応援の提供程度のことだが、これが卒塾生とのつながりを保つ手段ともなっている。

本塾のもう一つの特徴は、経営に必要なスキルとマインドセットを全て私と共に包括的に修得することだ。大学や研修機関などのビジネススクールで経営を学ぶ際は、分野(科目)ごとに異なる専門家から学ぶのが一般的だ。

しかし、経営で直面する課題への取組みは、特定分野に限定した知識やスキルだけで成せるものではなく、①経営思考、②問題解決と計画立案、③財務・会計、④組織・人事、⑤意思疎通、⑥企業倫理と志などの分野の知識とスキルとマインドセットを総動員して捉え、複数の分野の事柄に並行して対処する必要がある。

それにはこれらを科目毎に別々に学ぶ「引出し学習方式」では立ち行かず、「経営というキャビネットをまるごと体得する」必要がある。本塾は(モジュール毎に主たる学習分野を設定しているものの)一人の経営経験者が全ての分野を一気通貫でファシリテーションし、必要に応じて分野を横断して進める。また、根底にある共通概念やマインドセットへの理解も深める。


受講生は、私からのインプットを一つのサンプル(たたき台)として、自らの力で経営実践に必要な力量と感性を総合的に磨く。単一の
科目ベースではなく、「経営リーダーとして本気で社会を生き抜く*」ことをテーマに結ばれていることも、卒塾後も長年にわたり関係が維持される一因と考えている。

10年以上も前の受講生同士が今でも定期的に集い、私もお招きを頂くことがある。ある企業では塾名を冠としたゴルフコンペが毎年開かれている。私もこれまでに国内だけでなく、米国、中国、台湾、シンガポール、インド、ポーランドなどの現地に、赴任した卒塾生を訪ねた。

長い職業人生、卒塾生各位の将来も悲喜こもごも、紆余曲折があるだろう。誰かに話したくなるようなことがあれば、弘倫館の門戸をたたいて欲しい。これからも次世代を切り拓く人たちの活動を応援し続けたい。


*(関連留考録M0 本気で社会を生き抜く力、それが経営力

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