M2 VOC探索で新規ビジネスの芽を拓く


VOCとは Voice of Customer(顧客の声)の略。これをどう聴き、これにどう応えるか、事業成立の鍵はここにある。営業やアフターサービス部門だけではない。設計、開発、さらには経営トップを含め、会社組織の全ての顧客接点に関わる。しかし、この感度が高い組織は意外に少ない。

VOCの聴取は、ただ顧客の話を漫然と聞くだけでは覚束ない。事前にテーマを想定し、自分の考えを整理しておく。顧客の実情や計画、要望などを聴く際は、予め自分なりの仮説を立て、話の展開に応じて考えを更新しながら会話を進める。顧客接点を仮説の検証・更新の場と捉えると、VOCの質が高まる。

顧客が話す内容は、「事実(Fact)」なのか、本人の「認識(Understanding)」なのか、「意見(Opinion)」なのかを聴き分ける。これらを混同すると、間違った事実認識を持ったり、相手の不用意な発言に振り回わされたりしかねない。同じ客先でも、製品やサービスを利用する部門と購買窓口となる部門とでは、VOCは異なる。人や立場が違えば、関心事も異なり、話も変わり得る。上記3つの区別は意識したい。

日本の国内市場は、今や多くの分野で基礎的な需要がほぼ満たされている。事業の成長には、顧客自身も気づいていない潜在欲求・サイレントボイスを探索する段階に入っている。一方、技術革新が激しい現在は「昨日まで不可能だったことが、今日は可能」ということが起こり得る。最新技術と顧客の潜在欲求を迅速に、かつ的確にマッチングさせることが、新規ビジネス開発の勝負を分ける。

これには「顧客協創プラットホーム」が欠かせない。顧客協創プラットホームとは、顧客と協働で「技術によって実現できる可能性」と「顧客が持つ潜在欲求」をマッチングさせ、すり合わせ、製品やサービスの形に仕立て上げていく開発プロセスのことだ。

自社にはシーズ(技術)はあるが、顧客ニーズが掴めていない。他方、顧客は技術知見に乏しい上に、自らのニーズも明確に認識しているわけではない。この二つに橋を架けるには、協創プラットホームをベースに、早い段階から「試作品:プロトタイプ」を作り、「実証試験:Proof of Concept(略してPoC ポック)」を繰り返す。

プロトタイプはシンプルなものからスタートし、ポックから得たVOCの結果を次のプロトタイプに反映する。このサイクルを連続して速く回す。その過程から顧客の潜在ニーズが表出し、製品やサービスのコンセプトや仕様が練り上げられていく。

例えば、新型ドローン開発では、顧客のオペレーション実態を協創プラットホームで共有し、最新ドローン技術で可能なソシューションを提示、顧客が潜在的なニーズを掘り起こすきっかけを与える。その刺激によって得られたVOCからプロトタイプを起こす。顧客はドローンがどこまでのことが出来るかを具体的に知り、開発者は顧客が無理だと諦めていた潜在欲求を顕在化させる。

これを繰り返すことによって顧客が望む要素を付加し(=顧客価値を高め)、製品の完成度を上げていく。従来型の、限られたVOCをもとに開発初期段階に開発者側で製品コンセプトを固め、その後試作品を出すにも厳格な社内レビューを経る開発スタイルとは大きく異なる。

顧客協創プラットホームは、顧客の声なき声・サイレントボイスの探索を可能とし、アジャイル(迅速な)開発と、開発コストの抑制と、顧客満足度のアップを同時に達成し得る。今後のカスタマージャーニー型ビジネスの重要な一要素として、自社の打ち手に加えたい。


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