経験則がベースとなる経営力だが、その効率的、効果的な身につけ方はあるのだろうか。私の答えは「ある」だ。弘下村塾では、経営力養成の方程式を『 経営力 =( スキルの修得 + マインドの醸成 ) X 経験 』としている。今回はこれについて説明し、日々の活動の中で無理なく恒常的に経営力を身につける方法を記したい。
方程式の右辺は、「スキルの修得」と「マインドの醸成」の和(足し算)に「経験」を掛ける形になっている。経営力は総じて経験に比例する。ここで言う「経験」とは経営経験のことだが、経営職に就いたことがない人は「ゼロ」かというと、そうではない。
経営とは広くは「人を先導して、社会に役立つことを成す営み」であり、そう考えると、大半の人がこれまでに何らかの形でこれに類する活動にかかわっているものと思う。特に経営職と名がついていなくても、現在職場で部下を持つ身であれば、この種の経験は日々積み上がっているとみていい。
しかしながら、多くの人がこの確たる実感を持てないのが実情ではなかろうか。その原因は方程式のカッコの中にある。
経営基礎力を効率的、かつ効果的に身につけるには、日々遭遇する出来事をこれまでに先達が積み上げた叡智(経営の基本スキルとマインド)に照らして顧みることだ。伝承された叡智には普遍性や原則が含まれている。
一つひとつの経験を個別に体得するだけではなく、それを普遍性や原則に照らしてみると、経験したことの本質が浮かび上がり、経験が概念化される。これが他のケースへの応用を可能とし、生きた運用知となる。カッコの中(スキルの修得とマインドの醸成)にはその重要性がある。
カッコの中を良く見ると、保持すべきはスキルとマインド自体ではなく、修得と醸成となっていることに気づくと思う。経営力の養成には、特定の技量を持っていることより、それを獲得する行動が鍵となる。すなわち、経営経験と並行して、新たな学びを得たり、これまでに学んだことを繰り返しレビューすることで、参照すべき普遍性や原則の幅を広げ、強固にすることだ。その点から、研修やセミナーは一度受けたらオシマイではない。
物事の修得には3つのレベルがある。
レベル1:知っている。簡単な説明はできるが、自分がそれを使ったり行動できるわけではない。
レベル2:人に説明して理解を得ることができる。意識すれば使ったり行動に反映したりできるが、必ずしもいつも上手くできるわけではない。
レベル3:自らの自然な行動として身についており、行動が他者のお手本となり得る
ゴルフや絵画なども同様だが、経営は単に知っているレベルでは使いモノにはならない。少なくともレベル2は目指したい。最終的にはレベル3が目標だが、この域に達するには「基本と実践の間を何度も行ったり来たりする」必要がある。これによって基本への理解(「知っている」深度)も進化する。だからこそ、基本スキルとマインドを日々の活動と連動して無理なくレビューすることが欠かせない。
弘下村塾では、研修後もワークショップ資料を手元に置いて、事ある毎に関連するパートに目を通すことを推奨している。塾で使用する資料はパワーポイントのスライド形式なので、眺めるだけでも一定の刺激(学びの強化)になるだろう。
また、経営実践に使う基本スキルとマインドをそれぞれ 145 と 86 に特定し、分野ごとに内容を簡潔にまとめたレビュー教材を使って、卒塾生が自らの経営力を定期的にチェックできるようにしている。少しの努力でもこれらの地道な活動を継続することで、経験と相まって、経営基礎力が身につく。
経営実践力の獲得も伝統芸能と同様に、集大成への道筋は「守」、「破」、「離」。先ずここで記した修得の「型を守る」ことに徹し、それが出来たら「型を破り」、最後は「独自の道へと離れて」行く。
もし現在、職場の将来に不安を感じていたり、経営のあり方に疑問を抱いているのなら、今から恒常的に経営実践力を養う行動パターンを確立し、新たな時代の変革の旗手となって欲しい。志ある多くの人にそうなって欲しいと、強く願っている。
(関連留考録)
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M0 本気で社会を生き抜く力、それが経営力
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